パソコンやインターネットを使って家に居ながら仕事をする事ができる世の中で、主婦のように扶養に入っている人が家計を助けるために事業を始めたいと思うことは少なくありません。でもそのためには、扶養に入ったままで個人事業主になることが出来るのかを確認しておきましょう。
まず、ここで取り上げている人はどういう人が当てはまるのかを知るために扶養要件の内容を見てみましょう。混乱してしまいがちですが、税金と社会保険では扶養要件の定義が変わってきます。
どちらか一方だけに当てはまるようにするのではなく、『税金』と『社会保険』の両方に当てはまるようにしなければいけません。
税金における扶養要件について
税金について見ていくと、対象となることが出来るのは配偶者と配偶者以外の6親等内の血族及び3親等以内の姻族です。今の世の中ではあまり同一世帯でそれほど大家族になることは珍しくなっていますが、いとこの孫や配偶者の兄弟の子も範囲内となります。なお同一世帯というのは同じ屋根の下でなくても遠くの大学で一人暮らしをしているけれども生活費を仕送りしていたり単身赴任で世帯主が別の場所で仕事をしていたりするときも該当します。さらに年齢ですが年末の12月31日時点で16歳以上である人が対象となります。上限はありません。
上記の範囲内であることに加えて、どのくらいの収入があるかも関係してきます。所得税では配偶者には配偶者控除があり収入に対して一律38万円となっています。さらに38万円を超えたときでも合計所得が76万円未満(給与収入のみであれば年収103万円超から141万円未満)であれば配偶者特別控除を受けることができます。
配偶者以外の親族については所得が38万円以下(給与所得の場合には給与所得控除を合わせて103万円)であれば38万円の控除を受けることができます。19歳から23歳未満であれば「特定扶養親族」となり控除額は63万円、さらに70歳以上であれば同居老親等かどうかで控除額が変わってきます。
一方で住民税については、年齢に応じて38万円から38万円の控除が認められています。ただし、各自治体ごとに非課税限度額というものがあり、その範囲内であれば税が徴収されません。この非課税限度額は自治体ごとに異なります。
所得税と住民税については、対象年度の違いもあります。所得税は現年分の所得税がかかり住民税は翌年度の住民税です。「年分」と「年度」の違いを混同しないようにしなければいけません。
社会保険のにおける扶養要件について
では社会保険のほうではどうなっているのかというと、対象となるのは配偶者と3親等以内の親族です。ただし、法律的には婚姻関係がない内縁関係にあるときでもここでは対象となりえます。そのためには同居の事実を確認する事ができる被保険者世帯全員の住民票と戸籍謄本・抄本を用意することになります。この書類がないけれども事実関係があるというときには申立書を出すことで認められます。
相手が外国人であるときには日本の戸籍がないので在留カードと婚姻要件具備証明書及びその日本語訳、同一世帯の住民票を用意することになります。配偶者・子ども・父母祖父母・弟妹については生計を一にしていれば同居していなくても範囲になりますが、それ以外の3親等については同居していなければいけません。
税金については年齢の上限はありませんでしたが、社会保険では75歳未満という制限があります。それ以上であれば後期高齢者医療制度により自分で健康保険に入らなければいけなくなるからです。
これらの要件を満たした上で、扶養に入るための収入ですが1年間で130万円未満となります。なお収入は扶養となることになった年から先の1年間に得られる見込みです。それが60歳以上あるいは障害を持っている場合には180万円未満まで認められます。
個々で気をつけなければいけないのは、税金と違って所得ではなく収入が基準となっていることです。
所得の場合には稼いだお金から所得控除を差し引いた金額となるのですが、収入は差し引かずにそのままの金額ということになります。また公的年金や怪我をしたときに支払われる傷病手当金なども収入には含まれてしまいます。そのために、税金では余裕があったけれども、社会保険では基準を超えてしまうということが起こりえます。
そして、加入している健康保険組合で個人事業主に対する対応も異なるので、確認しておかなければいけません。収入は基準以下であるけれども、個人事業主であるということで資格がなくなることもあるからです。
このふたつの扶養要件以外で、考えておかなければいけないこととして、配偶者の家族が勤めている会社での扱いはどうなるのかということです。扶養家族がいるときには会社から家族手当が出ていることがあります。もしも個人事業主となったことで所得・収入を得てしまうと、これが打ち切られてしまう可能性が出てきます。
こういった基準にひっかかるかもしれないので申告をしないとなれば、それがわかったときに延滞金なども含めて徴収されるかもしれないので賢い方法ではありません。わからないことがあれば税務署や健康保険組合に相談をしてみましょう。